郷土石見機関誌90号

<特 報> 島田俊雄のこと(その二)

─ 昭和初期「政党政治黄金時代」に活躍した石見出身の政治家 ─

飯 田 泰 三


政友会代議士としての島田俊雄の具体的活動ぶりを知るための資料は、手近にはほとんどないといってよい。
たとえば日記が残されていれば一番いいのだが、だいたい近代日本の政治家たちは、平安朝の貴族政治家とはちがって、自分の記録を残さないのが普通である。(『原敬日記』や『田健治郎日記』『宇垣一成日記』などは例外である。) また、よくある側近者や後継者などによる伝記の類も、派閥を作らず子分を持たない島田であったし、戦後公職追放になり、まもなく昭和22年12月に死去したことで、ついに作られないままに終った。

 

もちろん、浩瀚な『立憲政友会史』(全10巻、大正13~昭和18年。復刻版、日本図書センター、1990年)を丹念に読めば、島田の行動の大体はたどれるはずである。しかし今の私には、それをする余裕がない。
また政友会の機関誌として『政友』(明治33~昭和18年)があり、さらに日刊政治情報紙『政友特報』というものもあったが(大正15年創刊。部分的復刻版が芙蓉書房から2007年刊)、それらについても同様である。
したがって本稿でできるのは、前回同様、主として『勤続表彰記念 島田俊雄先生』(昭和20年)等における諸家の断片的証言によりつつ、島田の政治家としての行動軌跡の一端と、それを通じて浮かび上がる政治家島田の個性的風貌を描き出す試みである。とはいえ、じつは島田俊雄の政治家としての行動軌跡をたどることは、近代日本政治史における昭和戦前期の政友会本流、ないし議会主流派(立憲派)の果たした役割をどう見、どう評価するかという問題にかかわってくる。つまり島田俊雄を論ずることは、石見出身の有力政治家を論ずるというにとどまらない、日本憲政史の根幹部分の解明に連なるテーマなのである。(升味準之助『日本政党史論』第5~7巻、坂野潤治『日本憲政史』、古川隆久『戦時議会』、奥健太郎『昭和戦前期立憲政友会の研究』、有竹修二『前田米蔵伝』等、参照。)

 

さて前回は、島田が明治四五年五月に衆議院議員に初当選し、支那視察議員団の一員として中国旅行に出かけたのち、大正2年1月に立憲政友会に入党するところまでを見た。
大正二年は、いわゆる大正政変の起こった年であった。前年末から盛り上がった「閥族打破・憲政擁護」の運動は2月にピークに達し、数万の民衆が騒擾化して国会を包囲する中で、2月11日、第三次桂内閣は総辞職した。同日に開かれた元老会議(山県有朋・大山巌・西園寺公望)において、西園寺は海軍大将・山本権兵衛を推し、大山と山県もそれに同意したので、2月20日、山本内閣が政友会を与党として成立した。(これを機に、西園寺は政友会総裁を退き、3月1日、原敬と松田正久に党指導の役割を引き渡した。)


この内閣は、首相・山本権兵衛、外相・牧野伸顕、内相・原敬、蔵相・高橋是清、陸相・木越安綱、海相・斎藤実等であって、閣僚10名中の六名を政友会員が占めた。このとき尾崎行雄ら、護憲(=閥族打破)運動の先頭に立っていた政友会硬派24名は、政友会が薩摩閥・海軍閥に属する山本の率いる内閣の与党になったことに憤慨し、脱党して政友倶楽部(のち中正会)を組織したが、島田俊雄はそれには加わらなかった。
なお、尾崎は前掲の「追憶と希望」において、「明治の末年に方つて、私が政友会に復帰したのは、主として島田君再三の勧誘に起因するのです。然るに其後私は政党を離脱し其所属を異にした為め、議会に於て衝突することすらあつたのは、私の遺憾に堪へざる所です。」と書いている。

 

同前書の「島田俊雄先生年譜」によれば、この年12月に召集された第31議会においては、島田は立憲政友会政務調査会第一部(外務・司法・文部)の理事を務めている。また、治安警察法中改正法律案委員、戸籍法中改正法律案外三件委員・同理事、地方学事通則改正法律案外一件委員・同理事、裁判所構成法中改正法律案外一件委員・同理事を務めている。そして大正3年2月17日、「衆議院に於て地租条例中改正法律案の討論に立つ。処女討論なり」とある。(同年譜)


この討論内容は、同前書に大木操(昭和19年当時の衆議院書記官長)が衆議院にあった記録に基づいて寄稿した「島田さんの本会議発言」中に、全文が引用されている。その前書きとして付された大木のコメントに次のようにある。当時の衆議院各派は、国民の負担軽減の為、夫々の主張に随ひ税制整理を強調して、各種の改正法律案を発議したのであつたが、当時の国民党は地租七厘減を骨子とする地租条例中改正法律案を発議し、同志会からは之に対する修正案を出し、其の第二読会に於て島田さんは、原案並修正案に対する反対の討論をされたのである。ページナビへ戻る

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